ただこころもちはやすらかに、その血のついた大きなくちばしは、横にまがっては居ましたが、たしかに少しわらって居りました。
他力本願で人に頼ってしまう人が、
- 自力で叶える価値を知ることができる
- 達成できる願いが大きくなる
- 自力で成し遂げる達成感を味わえる
『よだかの星』のあらすじ
よだかはみにくい鳥です。
他の鳥からそのみにくい姿を嫌われ、面と向かって悪口を言われたりします。
実はよだかは名前こそ「夜鷹」ですが、鷹の仲間ではないのです。
そのことを鷹に嫌がられて「改名しろ」「市蔵という名前にしろ」としつこく言われて、できなかったら殺してやるとまで脅されているのです。
よだかは辛い気持ちのまま夜の空を飛び回ります。
夜中に飛んでいると小さい甲虫がよだかの喉へ入るのですが、そのことに気が付いてよだかは大声をあげて泣き出します。
ああ、かぶとむしや、たくさんの羽虫が、毎晩僕に殺される。そしてそのただ一つの僕がこんどは鷹に殺される。それがこんなにつらいのだ。
鷹に殺されようとする自分も同じようにたくさんの虫を殺していることに気がつき、傷ついたよだかははるか遠い空の向こうに行ってしまおうと決意するのです。
よだかはまずはお日さまに遠くに連れて行ってもらうように頼みます。
しかし、よだかは「夜の鳥」だということで「星に頼むように」とお日さまに言われてしまいます。
夜になってよだかは、西のオリオンの星、南の大犬座、北の大熊星、東の鷲の星のところに頼みにいきます。
しかし、どの星にも相手にしてもらえずに冷たく断られてしまいます。
よだかはわずかな体力で空に上昇していきますが、星には少しも近づくことができません。
やがて、意識朦朧となったよだかは自分の体がカシオペア座の横で青白く燃えていることに気がつきました。
これが「よだかの星」となり、今も燃え続けているのです。
名言の状況
よだかが空に昇っていき力尽きる場面です。
最後の力をふりしぼって星に向かうも一向に近づくことができません。
上空の寒さで息は凍り、霜が容赦なくよだかの体を傷つけます。
なみだぐんだ目をあげてもう一ぺんそらを見ました。そうです。これがよだかの最後でした。もうよだかは落ちているのか、のぼっているのか、さかさになっているのか、上を向いているのかも、わかりませんでした。ただこころもちはやすらかに、その血のついた大きなくちばしは、横にまがっては居ましたが、たしかに少しわらって居りました。
名言の本質
よだかは「辛い」世界から逃げ出したく星やお日さまに遠いところに連れて行ってくれるように頼みますが、星たちからは厳しい言葉を浴びせられてしまいます。
おまえなんか一体どんなものだい。たかが鳥じゃないか。おまえのはねでここまで来るには、億年兆年億兆年だ。(南の大犬座)
余計なことを考えるものではない。少し頭をひやして来なさい。(北の大熊星)
星になるには、それ相応の身分でなくちゃいかん。又よほど金もいるのだ。(東の鷲の星)
よだかが感じる「辛い」世界とは「鷹に殺されてしまうこと」ではなく、「誰の役にも立たずに死んでしまうこと」「他の命を奪ってしまうこと」ではないかと思います。
- これで誰も殺さず誰にも殺されない世界に行くことができる。
- たとえ死ぬにしても最後は誰かの役に立って死にたい。
そんなよだかの「自己犠牲の精神」が星になれた理由の1つかもしれませんね。
自分の体が青い美しい光になっているのに気がついたよだかはこれで
星になれると確信しました。
それは星たちの助けを借りずに自分の力で達成したものでした。
よだかは自力で目的を達成できた満足のほほえみを浮かべていたのではないでしょうか。
行動への応用
願いを叶えるのに絶対に人に頼るな!と言っているのではありません。
問題は自分で頑張ろうとせずにすぐに人に頼って物事を解決しようとしたり願いを叶えてもらおうとする超「他力本願」な人です。
もうどうしよもないとか専門的なことが分からないから教えてくれとかいうのであればまだいいのですが、「それくらい自分で考えてやってくれよ・・」と思うような状況でも頼ってきます。
そんな人の口癖は絶対「一生のお願い」でしょうね。
「すぐ人に頼ってしまうという自覚がない人」や「人に何かをしてもらって当然と思っている人」はこの際放っておきます。
でも自信がなかったり優柔不断だったり臆病だったりと感じていて、つい誰かに頼ってしまうという人には効く名言です。
優しくて弱かったよだかは傷つけられて自分の世界から逃げ出そうとするも、違う世界に行くことも拒否されてしまいます。
それでも自力で目的を成し遂げました。
だからこそ価値があり星になって今も燃え続けていられるのです。
- 「お前もね、どうしてもとらなければならない時のほかはいたずらにお魚を取ったりしないようにして呉れ。ね、さよなら。」
- 「お日さん、お日さん。どうぞ私をあなたの所へ連れてって下さい。
灼けて死んでもかまいません。
私のようなみにくいからだでも灼けるときには小さなひかりを出すでしょう。
どうか私を連れてって下さい。」 - そしてよだかの星は燃えつづけました。
いつまでもいつまでも燃えつづけました。
今でもまだ燃えています。